【2008年9月】
煙草を吸う夢を見た。自室の布団の上で寝っ転がりながら吸っていた。灰皿はなく、ティッシュや紙くずだらけのゴミ
箱に、そのまま煙草を押し付けて消していた。いまどき、いちいちマッチを擦って火をつけていた。終始、夕焼けの強
烈な橙が、六畳の部屋を照らしていた。部屋の電気はついていなかった。私はやたらと時間をかけて、一箱分の煙草を
吸いきろうとしていた。だが、夢の中でも私は明らかな煙草初心者で、不機嫌そうな顔をしてフィルターをくわえてい
た。おいしいとは思っていなかった。
一度布団から立ち上がり振り向くと、いつ入ってきたのだろうか、姉がいた。私がさっきまで居た、全く同じ場所に同
じ姿勢で寝っ転がっていた。いつもの姉とは違い、どこか寂しげな顔をしていた。姉にも何か思うところがあるのだろ
う。そのとき、もしかしたら姉も煙草を吸っていたかもしれない。
「珍しいなあ」
と言われた。
「でも喉が痛いから、もう吸わないかもしれない。」
と返した。事実、最後の一本はくわえているのすら億劫な状態で、かなりの長さを残したまま、捨ててしまったし、ふ
かしているだけで、肺には煙を入れていないように感じていた。もしかしたら、私は全ての煙草をふかしていただけか
もしれないのだけれど。それから、呟くように姉と話した。それによって、私は少しだけ気持ちが軽くなって、姉は手
に入れたい種類の性欲を手に入れた(もしくは取り戻した)ようだった。
目が覚めたとき、部屋が夕焼け色でなかったことが、無性に悔しかった。